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京都地方裁判所 昭和60年(わ)547号 判決

裁判所書記官

杉浦輝男

本籍

福岡県田川郡大任町大字今任原三三四六番地

住居

京都市南区久世中久世町二丁目一一五の二

団体役員

鈴木元動丸

昭和一四年三月二一日生

本籍

京都府綾部市中ノ町二丁目三一番地

住居

京都市東山区大和大路通五条上る山崎町三五二 メイゾン六波羅六〇一号

団体役員

長谷部匡宣こと長谷部純夫

昭和七年三月三〇日生

右両名に対する各相続税法違反、所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官福嶋成二出席の上、次のとおり判決する。

主文

被告人鈴木元動丸を懲役三年及び罰金五〇〇〇万円に、被告人長谷部純夫を懲役三年六月及び罰金五〇〇〇万円にそれぞれ処する。

被告人両名に対し、未決勾留日数中各一〇〇日をそれぞれその懲役刑に算入する。

被告人両名においてその罰金を完納することができないときは、各金一〇万円をそれぞれ一日に換算した期間その被告人を労役場に留置する。

訴訟費用は被告人両名の連帯負担とする。

理由

(犯行に至る経緯)

被告人鈴木元動丸は、昭和五三年秋ころ、西田格太郎らと共に、同三五年五月ころ結成された全日本同和会に属する、全日本同和会京都府・市連合会(以下、「同和会」という。)を設立してその副会長に、同五七年春ころには西田会長の死亡に伴いその後をうけてその会長となったもの、被告人長谷部純夫は、同五四-五年ころ同和会に入会し、同五五年一一月ころ同和会亀岡支部副支部長に、同五六年一月同和会事務局長になったもので、被告人両名はそれぞれ同和会の要職にあったものであるが、同和会では同五五年一一月一一日第三回理事会を開きいわゆる税金対策を審理し、次いで、同月三〇日には被告人両名も出席して仮称税務委員会が開かれて同和会会員に対する税の減免を協議するなどして、翌五六年にかけて、被告人両名ら同和会幹部らは、いわゆる税務対策として、納税義務者の依頼に応じて、相談の上、同和会本部において申告書作成等の申告・納税手続一切を行い、その際、譲渡所得の申告に当たっては納税義務者が他の主債務者の債務につき保証債務を履行するため当該財産を譲渡したが右主債務者が破産したため求償権の行使が不能に陥ったなどとし、また、相続税の申告に当たっては、被相続人に債務があり、これを相続人である納税義務者が支払ったなどとしてそれぞれ虚偽の申告をし、納税額を五ないし一〇パーセントに低減させ、これと正規税額との差額のうち約半額をカンパ金等の名目で納税義務者から同和会に納付させて利得しようと考え、同和会支部等に納税義務者の紹介を依頼すると共に、右申告書類上債務支払いの形式を整えるため、架空債権者として領収書を発行する必要上、同五六年五月一日被告人鈴木元動丸を代表取締役、被告人長谷部純夫らを取締役とするなどして有限会社同和産業(以下、「同和産業」という。)の設立をなした外、右架空保証債務を計上する関係で倒産主債務者にあてるため、真実倒産している株式会社ワールド(以下、「ワールド」という。)及び株式会社誠組(以下、「誠組」という。)の各会社印を入手する等していた。

(罪となるべき事実)

被告人両名は、

第一  中川増穂、同和会事務局次長渡守秀治(以下、「渡守」という。)らと共謀の上、右増穂の実父中川佐一が同五七年一〇月一四日死亡したことに基づく増穂の相続税を免れようと企て、実際の課税価格が五億三二八九万〇六三二円で、これに対する相続税額は一億四五九五万七六〇〇円であるにもかかわらず、被相続人佐一が同和産業から三億五〇〇〇万円を負担していたと仮装するなどした上、同五八年四月一一日、京都市東山区馬町通東大路西入新シ町所在所轄東山税務署(以下、「東山税務署」という。)において、同署署長に対し、相続財産の課税価格が九四二五万六二二三円で、これに対する相続税額は三七一万三四〇〇円である旨の虚偽の相続税申告書を提出し、もって不正の行為により右相続にかかる正規の相続税額一億四五九五万七六〇〇円との差額一億四二二四万四二〇〇円を免れ

第二  山崎章、山内健一及び渡守らと共謀の上、右章の父山崎賢二がその所有する京都府宇治市伊勢田町中遊田三番外七筆の畑を同五九年三月一五日二億七〇〇〇万円で売却譲渡したことに関して、右章において右賢二の代理人として、右賢二の所得税確定申告をするに当たり、右譲渡にかかる所得税を免れさせようと企て、右賢二の実際の五九年分分離課税の長期譲渡所得金額は二億五四五〇万円、総合課税の総所得(不動産所得、給与所得)金額は二二二万三五一〇円で、これに対する所得税額(ただし、源泉徴収分を除く。)は七八〇八万六八〇〇円であるにもかかわらず、ワールドが同和産業から三億円の借入れをし、その債務について右賢二が連帯保証人となり、ワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡し、その譲渡収入で同年四月一五日に二億五〇〇〇万円を履行したが、ワールドに対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどした上、同六〇年三月一三日、京都市右京区西院上花田町一〇番地の一所在右京税務署(以下、「右京税務署」という。)において、同署署長に対し、右賢二の五九年分分離課税の長期譲渡所得金額は五五〇万円、総合課税の総所得金額は二二二万四七九五円で、これに対する所得税額(ただし、源泉徴収分を除く。)は一〇九万〇三〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右正規の所得税額七八〇八万六八〇〇円との差額七六九九万六五〇〇円を免れさせ

第三  林康司、辻井哲男(以下、「辻井」という。)及び渡守らと共謀の上、右康司の実父芳三が同五九年一月一六日死亡したことに基づく右康司の相続財産にかかる相続税を免れ、かつ同人が兄林昌男の代理人として申告する兄昌男の相続財産にかかる相続税を免れさせようと企て、右康司の相続財産の実際の課税価格が二億二三四七万〇八七〇円でこれに対する相続税額は八三六一万一四〇〇円であり、右昌男の相続財産にかかる実際の課税価格が四九五七万〇七二八円でこれに対する相続税額は一八六九万九一〇〇円であるにもかかわらず、被相続人芳三が同和産業から二億六三〇〇万円の債務を負担しており、右康司においてそのうちの一億九二〇〇万円を、右昌男においてそのうちの三一〇〇万円をそれぞれ承継したと仮装するなどした上、同年六月二二日所轄右京税務署において、同署署長に対し右康司の相続財産の課税価格が三五四〇万一二三〇円でこれに対する相続税額は四五一万九九〇〇円であり、右昌男の相続財産にかかる課税価格が一八七六万七二一一円でこれに対する相続税額は二七四万五七〇〇円である旨の虚偽の相続税の申告書を提出し、もって不正の行為により右康司の右相続にかかる正規の相続税額八三六一万一四〇〇円との差額七九〇九万一五〇〇円を免れ、かつ右昌男をして右相続にかかる正規の相続税額一八六九万九一〇〇円との差額一五九五万三四〇〇円を免れさせ

第四  中村利秋、中村艶子、辻井及び渡守らと共謀の上、右利秋の養父であり右艶子の実父である中村佑三郎が同五八年一月一日死亡したことに基づく右利秋らの相続財産にかかる相続税を免れようと企て、右利秋の相続財産にかかる実際の課税価格が九〇〇六万四〇八二円でこれに対する相続税額は二〇二五万五〇〇〇円であり、右艶子の相続財産にかかる実際の課税価格が八九八五万九四五二円でこれに対する相続税額は二〇一九万四二〇〇円であるにもかかわらず、被相続人佑三郎が同和産業から一億六〇〇〇万円の債務を負担しており、そのうち各六〇〇〇万円を右利秋、艶子の両名においてそれぞれ承継したと仮装するなどした上、同年六月二九日、所轄右京税務署において、同署署長に対し、右利秋の相続財産の課税価格が二一五七万三八〇三円でこれに対する相続税額は一二万六四〇〇円であり、右艶子の相続財産の課税価格が二一四三万九七五五円でこれに対する相続税額は一一万二四〇〇円である旨の虚偽の相続税の申告書を提出し、もって不正の行為により右利秋の右相続にかかる正規の相続税額二〇二五万五〇〇〇円との差額二〇一二万八六〇〇円を、右艶子の右相続にかかる正規の相続税額二〇一九万四二〇〇円との差額二〇〇八万一八〇〇円をそれぞれ免れ

第五  高橋義治、辻井及び渡守らと共謀の上、右義治の実父高橋卯三郎が同五八年一月二〇日死亡したことに基づく右義治の相続財産にかかる相続税を免れることを企て、右義治の相続財産にかかる実際の課税価格が一億二三四〇万九〇八二円でこれに対する相続税額は三九四五万四五〇〇円であるにもかかわらず、被相続人の卯三郎が同和産業から八二〇〇万円の債務を負担しており、右義治において右債務を承継し全額支払ったと仮装するなどした上、同年七月一四日、所轄右京税務署において、同署署長に対し、右義治の相続財産にかかる課税価格が四一四〇万九〇八二円でこれに対する相続税額は三六七万二七〇〇円である旨の虚偽の相続税の申告書を提出し、もって不正の行為により右相続にかかる正規の相続税額三九四五万四五〇〇円との差額三五七八万一八〇〇円を免れ

第六  西村博、西村博文、山田廣子、渡守及び同和会八幡支部長、西村昭和(以下、(西村)という。)らと共謀の上、右博、博文、廣子の実父である西村正明が同五七年五月二四日死亡したことに基づく右博らの相続財産にかかる相続税を免れようと企て、右博の相続財産にかかる課税価格が六二一六万五〇八七円でこれに対する相続税額は二〇七〇万四二〇〇円であり、右博文の相続財産にかかる実際の課税価格が二億五〇九五万八四六七円でこれに対する相続税額は九二〇〇万二二〇〇円であり、右廣子の相続財産にかかる実際の課税価格が七三四三万四一九四円でこれに対する相続税額は二六八九万二九〇〇円であるにもかかわらず、被相続人の右正明が同和産業から二億七五〇〇万円の債務を負担しており、右博においてそのうち四〇〇〇万円を、右博文において同様一億八五〇〇万円を、右廣子において同様五〇〇〇万円をそれぞれ承継したと仮装するなどの行為により、同年一一月一七日、京都府宇治市大久保町井ノ尻六〇番地の三所在所轄宇治税務署(以下、「宇治税務署」という。)において、同署署長に対し、右博の相続財産にかかる課税価格が二二一六万五〇八七円でこれに対する相続税額は一六一万八五〇〇円(ただし、申告書には計算誤りのため課税価格は一九一五万〇八四一円で相続税額は一〇八万四三〇〇円と記載)であり、右博文の相続財産にかかる課税価格が六六三一万八四三八円でこれに対する相続税額は一〇六八万三一〇〇円であり、右廣子の相続財産にかかる課税価格が二六〇八万八四六九円でこれに対する相続税額は四〇九万五一〇〇円である旨の内容虚偽の相続税の申告書を提出し、もって不正の行為により右各相続にかかる右博の正規の相続税額二〇七〇万四二〇〇円との差額一九〇八万五七〇〇円を、右博文の正規税額九二〇〇万二二〇〇円との差額八一三一万九一〇〇円及び右廣子の正規税額二六八九万二九〇〇円との差額二二七九万七八〇〇円をそれぞれ免れ

第七  中村清一、渡守及び同和会南支部長藤本勝英(以下、「藤本」という。)らと共謀の上、右中村がその所有する京都市西京区桂滝川町五番二の田を同五八年六月四日一億三七三八万三五〇〇円で売却譲渡したことに関して右譲渡にかかる所得税を免れようと企て、右中村の実際の五八年分分離課税の長期譲渡所得金額は一億二七六八万四〇〇〇円、総合課税の総所得(農業所得)金額は二八万九三一九円でこれに対する所得税額は二三五三万六八〇〇円であるにもかかわらず、ワールドが同和産業から一億八〇〇〇万円の借入れをし、その債務について右中村が連帯保証人となりワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡し、その譲渡収入で同年七月一〇日に一億二〇〇〇万円を履行したがワールドに対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどした上、同五九年三月九日、所轄右京税務署において、同署署長に対し、右中村の五八年分分離課税の長期譲渡所得金額は七八七万七三一五円、総合課税の総所得金額は二八万九三一九円でこれに対する所得税額は一一五万二六〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額二三五三万六八〇〇円との差額二二三八万四二〇〇円を免れ

第八  中西仙太郎、渡守及び西村らと共謀の上、右中西がその所有する京都府八幡市八幡一ノ坪八二番地外四筆の田を同五九年三月五日二億九五八三万で売却譲渡したことに関して右譲渡にかかる所得税を免れようと企て、右中西の実際の五九年分分離課税の長期譲渡所得金額は一億四五〇一万二三〇五円、総合課税の総所得(農業所得)金額は二一万二〇〇〇円でこれに対する所得税額は三九四八万四一〇〇円であるにもかかわらず、ワールドが同和産業から二億円の借入れをし、その債務について右中西が連帯保証人となり、前ワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡し、その譲渡収入で同年三月二五日に一億三五〇〇万円を履行したが、ワールドに対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどした上、同六〇年三月五日、所轄宇治税務署において、同署署長に対し右中西の五九年分分離課税の長期譲渡所得金額は一〇〇二万六九五五円、総合課税の総所得金額は二一万二〇〇〇円で、これに対する所得税額は一六八万八六〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額三九四八万四一〇〇円との差額三七七九万五五〇〇円を免れ

第九  村上治、中村源治郎、有田峻宏、渡守、藤本、同和会乙訓支部長今井正義(以下、「今井」という。)らと共謀の上、右村上がその所有する京都市西京区大原野北春日町七七三番地の田を同五九年一二月二二日七五〇〇万円で売却譲渡したことに関して右譲渡にかかる所得税を免れようと企て、右村上の実際の五九年分分離課税の長期譲渡所得金額は六五一七万七〇〇〇円でこれに対する所得税額は一四四六万一〇〇〇円であるにもかかわらず、ワールドが同和産業から九〇〇〇万円の借入れをし、その債務について右村上が連帯保証人となり、ワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡しその譲渡収入で同年一二月二八日に六二〇〇万円を履行したがワールドに対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどした上、同六〇年三月一二日、所轄右京税務署において、同署署長に対し右村上の五九年分分離課税の長期譲渡所得金額は六一七万七〇〇〇円でこれに対する所得税額は九七万四二〇〇円(ただし申告書には扶養控除の適用誤りのため所得税額は九〇万八二〇〇円と記載)である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額一四四六万一〇〇〇円との差額一三六八万六八〇〇円を免れ

第一〇  香山利次、西村勝雄、渡守及び今井らと共謀の上、右香山がその所有する同市南区久世殿城町三〇六番地の一外一筆の田を同五八年七月二七日一億九八〇〇万円で売却譲渡したことに関して右譲渡にかかる所得税を免れようと企て、右香山の実際の五八年分分離課税の長期譲渡所得金額は一億八四七八万五一〇〇円、総合課税の総所得(農業所得、不動産所得)金額は三三四万二三八四円でこれに対する所得税額は五六一七万六八〇〇円であるにもかかわらず、ワールドが同和産業から二億円の借入れをし、その債務について右香山が連帯保証人となり、ワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡し、その譲渡収入で同年九月一五日に一億六五〇〇万円を履行したが、ワールドに対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどした上、同五九年三月九日、同市下京区間之町五条下る大津町八番地所在下京税務署において、同署署長に対し、右香山の五八年分分離課税の長期譲渡所得金額は一〇九五万円、総合課税の総所得金額は三三四万二三八四円でこれに対する所得税額は二三二万六二〇〇円(ただし申告書には医療費控除の計算誤りのため所得税額は二三一万九六〇〇円と記載)である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額五六一七万六八〇〇円との差額五三八五万〇六〇〇円を免れ

第一一  辻逸朗(以下、「辻」という。)、渡守及び今井らと共謀の上、右辻がその所有する同市伏見区久我本町七番地一七外九筆の田を同五八年八月二二日一億〇四九一万円で売却譲渡したことに関して右譲渡にかかる所得税を免れようと企て、右辻の実際の五八年分分離課税の長期譲渡所得金額は七八三七万一三五四円、総合課税の総所得(給与所得、不動産所得)金額は一七四万二〇〇〇円でこれに対する所得税額(ただし源泉徴収分を除く。)は一九一二万七一〇〇円であるにもかかわらず、ワールドが同和産業から八〇〇〇万円の借入れをしその債務について辻が連帯保証人となりワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡しその譲渡収入で同年九月一〇日に六五〇〇万円を履行したが、ワールドに対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどした上、同五九年三月九日、同区鑓屋町所在所轄伏見税務署(以下、「伏見税務署」という。)において、同署署長に対し、辻の五八年分分離課税の長期譲渡所得金額は八八七万一三五四円、総合課税の総所得金額は一七四万二〇〇〇円でこれに対する所得税額(ただし、源泉徴収分を除く。)は一八一万九八〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額一九一二万七一〇〇円との差額一七三〇万七三〇〇円を免れ

第一二  小林經男、辻、渡守及び今井らと共謀の上、右小林がその所有する同区久我西出町一一番三一外一筆の田を同五八年一一月三〇日九二四八万円で売却譲渡したことに関して右譲渡にかかる所得税を免れようと企て、右小林の実際の五八年分分離課税の長期譲渡所得金額は八五〇〇万九六四〇円、総合課税の総所得(不動産、給与所得)金額は六七六万八三三八円でこれに対する所得税額(ただし源泉徴収分を除く。)は二一八八万三四〇〇円であるにもかかわらず、ワールドが同和産業から一億円の借入れをし、その債務について右小林が連帯保証人となり、ワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡しその譲渡収入で同年一二月一五日に七八〇〇万円を履行したが、ワールドに対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどした上、同五九年三月九日、大阪府茨木市上中条一丁目九番二一号所在所轄茨木税務署において、同署署長に対し、右小林の五八年分分離課税の長期譲渡所得金額は七三五万三八〇〇円、総合課税の総所得金額は六七六万八三三八円でこれに対する所得税額(ただし源泉徴収分を除く。)は一六九万九一〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額二一八八万三四〇〇円との差額二〇一八万四三〇〇円を免れ

第一三  中嶋純次、辻、渡守及び今井らと共謀の上、右中嶋がその所有する京都市伏見区久我西出町一一番地の三二外四筆の田を同五八年一〇月六日及び同年一二月五日の二回にわたり二億四七〇七万二八四〇円で売却譲渡したことに関して右譲渡にかかる所得税を免れようと企て、右中嶋の実際の五八年分分離課税の長期譲渡所得金額は一億〇二一〇万二〇八二円、総合課税の総所得(農業所得、不動産所得、配当所得、利子所得、雑所得)金額は二〇二万五四八三円でこれに対する所得税額(ただし源泉徴収分を除く。)は二六八四万九六〇〇円であるにもかかわらず、ワールドが同和産業から一億二〇〇〇万円の借入れをし、その債務について右中嶋が連帯保証人となり、ワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡し、その譲渡収入で同年一二月一〇日に九一〇〇万円を履行したが、ワールドに対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどした上、同五九年三月九日、所轄右京税務署において、同署署長に対し、右中嶋の五八年分分離課税の長期譲渡所得金額は一一一〇万二〇八二円、総合課税の総所得金額は二〇二万五四八三円でこれに対する所得税額は二二九万二六〇〇円(ただし申告書には配当控除の計算誤りのため所得税額は二二九万一九〇〇円と記載、源泉徴収分を除く。)である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額二六八四万九六〇〇円との差額二四五五万七〇〇〇円を免れ

第一四  加藤壽雄、西村勝雄、渡守及び今井らと共謀の上、右加藤がその所有する同市東山区新橋通大和大路東入二丁目本町三七六番地の二所在の宅地・建物を同五九年六月二一日池田千鶴子に一億六七七九万六〇〇〇円で売却譲渡したことに関して右譲渡にかかる所得税を免れようと企て、右加藤の実際の五九年分分離課税の長期譲渡所得金額は一億五七八九万六一〇〇円でこれに対する所得税額が四四一六万九九〇〇円であり、かつ右譲渡所得は五九年分として申告すべきところ、右譲渡期間は同五八年一二月二二日で買主は寺石源太郎であり、しかもワールドが同和産業から二億円の借入れをし、その債権について右加藤が連帯保証人となり、右ワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡し、その譲渡収入で同五九年六月二二日に一億四五〇〇万円を履行したが、ワールドに対する求償不能により同額の損害を被ったとして、同年六月二三日東山税務署に右加藤の五八年分分離課税の長期譲渡所得金額が八四〇万六二〇八円、これに対する所得税が一七一万三七〇〇円について申告漏れとなっていた旨の虚偽の五八年分所得税修正申告書を提出して前記宅地・建物の譲渡にかかる所得税について申告済みであるように装うなどした上、同六〇年三月一五日、同市左京区聖護院円頓美町一八所在左京税務署(以下、「左京税務署」という。)において、同署署長に対し、右加藤の五九年分分離課税の長期譲渡所得金額はなく、総合課税の総所得(事業所得)金額は八〇万一五四一円でこれに対する所得税額はない旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の長期譲渡所得に対する所得税額四四一六万九九〇〇円を免れ

第一五  安田由紀夫、辻、渡守及び今井らと共謀の上、右安田がその所有する同市伏見区久我西出町五番一三の田を同五九年一一月二八日一億四九六七万円で売却譲渡したことに関して右譲渡にかかる所得税を免れようと企て、右安田の実際の五九年分分離課税の長期譲渡所得金額は六八六七万三六九一円、総合課税の総所得(給与所得)金額は四六八万一六七一円で、これに対する所得税額(ただし源泉徴収分を除く。)は一六二二万八四〇〇円であるにもかかわらず、同和産業から八〇〇〇万円の借入れをし、その債務について右安田が連帯保証人となり、ワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡しその譲渡収入で同年六月一〇日六二〇〇万円履行したが、ワールドに対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどした上、同六〇年三月九日、所轄伏見税務署において、同署署長に対し右安田の五九年分分離課税の長期譲渡所得金額は六六七万三九六一円、総合課税の総所得金額は四六八万一六七一円で、これに対する所得税額(ただし源泉徴収分を除く。)は一三三万四六〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額一六二二万八四〇〇円との差額一四八九万三八〇〇円を免れ

第一六  小原靖弘(以下、「小原」という。)、渡守らと共謀の上、小原がその所有する同市西京区御陵塚ノ越町七番地の田を同五六年一〇月七日八六八六万〇八〇〇円で売却譲渡したことに関して右譲渡にかかる所得税を免れようと企て、小原の実際の五六年分分離課税の長期譲渡所得金額金額は六二五一万七七六〇円、総合課税の総所得(営業所得、農業所得、不動産所得)金額は一九三万四八七〇円で、これに対する所得税額は一四二五万九八〇〇円であるにもかかわらず、誠組が同和産業から六〇〇〇万円の借入れをしその債務について小原が連帯保証人となり誠組が破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡しその譲渡収入で同五七年一月二〇日に全額履行したが、誠組に対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどした上、同年三月一五日、所轄右京税務署において、同署署長に対し、小原の五六年分分離課税の長期譲渡所得金額は二五一万七八〇〇円、総合課税の総所得金額は一九三万四八七〇円で、これに対する所得税額は五一万〇一〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額一四二五万九八〇〇円との差額一三七四万九七〇〇円を免れ

第一七  澤田圭司、澤田昭子、小原及び渡守らと共謀の上、右圭司の養父であり右昭子の実父である澤田幸太郎が同五七年一月五日死亡したことに基づく右圭司、右昭子の両名の相続財産にかかる実際の課税価格が一億三六三二万八四七三円で、これに対する相続税額は三七三七万八〇〇〇円であり、右昭子の相続財産にかかる実際の課税価格が一億〇八五六万六一〇五円で、これに対する相続税額は二九七九万六三〇〇円であるにもかかわらず、被相続人幸太郎が同和産業から一億七三〇〇万円の債務を負担しており右圭司においてそのうちの九三〇〇万円を、右昭子において同じく八〇〇〇万円をそれぞれ承継したと仮装するなどした上、同年七月三日、所轄右京税務署において、同署署長に対し、右圭司の相続財産にかかる課税価格が四三三七万四四七三円で、これに対する相続税額は五一九万〇二〇〇円であり、右昭子の相続財産にかかる課税価格が三一五八万八七〇五円で、これに対する相続税額は三七七万八二〇〇円である旨の内容虚偽の相続税の申告書を提出し、もって不正の行為により右各相続にかかる右圭司の正規の相続税額三七三七万八〇〇〇円との差額三二一八万七八〇〇円及び右昭子の相続税額二九七九万六三〇〇円との差額二六〇一万八一〇〇円をそれぞれ免れ

第一八  荒木信一、荒木ヒサノ及び渡守らと共謀の上、右信一がその所有する同市伏見区下鳥羽澱女町二〇番一外一筆の田及び同区下鳥羽上三栖町三番外一筆の山林を同五九年六月四日二億五〇〇〇万円で売却譲渡したことに関して右譲渡にかかる所得税を免れようと企て、右信一の実際の五九年分分離課税の長期譲渡所得金額は二億三四〇三万九〇〇〇円、総合課税の総所得(不動産所得、給与所得)金額は六一三万三八九〇円で、これに対する所得税額(ただし源泉徴収分を除く。)は七二四一万九〇〇〇円であるにもかかわらず、ワールドが同和産業から三億円の借入れをし、その債務について右信一が連帯保証人となりワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡しその譲渡収入で同年六月二〇日に二億二〇〇〇万円を履行したがワールドに対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどした上、同六〇年三月九日、所轄伏見税務署において、同署署長に対し、右信一の五九年分分離課税の長期譲渡所得金額は一四三三万九〇〇〇円、総合課税の総所得金額は六一三万三八九〇円でこれに対する所得税額(ただし源泉徴収分を除く。)は三六六万九五〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額七二四一万九〇〇〇円との差額六八七四万九五〇〇円を免れ

第一九  山本壽及び渡守らと共謀の上、右山本がその所有する同区中嶋外山町二〇番地外二筆の田を同五八年七月一八日三億〇七〇〇万円で売却譲渡したことに関して右譲渡にかかる所得税を免れようと企て、右山本の実際の五八年分分離課税の長期譲渡所得金額は一億五一八七万三七四一円、総合課税の総所得(不動産所得、給与所得)金額は二〇八万五八〇〇円でこれに対する所得税額(ただし源泉徴収分を除く。)は四三八三万五〇〇〇円であるにもかかわらず、同五九年三月一五日、所轄伏見税務署において、同署署長に対し右譲渡収入により同年末までに特定事業用資産を買い換える見込みである旨の買換え承認申請書を添付した所得税確定申告書を提出して右譲渡にかかる所得税の申告期限の延期手続きをした上、ワールドが同和産業から一億円の借入れをし、その債務について右山本が連帯保証人となり、ワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡しその譲渡収入で同年四月一〇日八五〇〇万円を履行したが、ワールドに対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどし、同六〇年四月一九日、右税務署において、同署署長に対し、右山本の五八年分分離課税の長期譲渡所得金額は四七八万二九九六円、総合課税の総所得金額は二〇八万五八〇〇円で、これに対する所得税額(ただし源泉徴収分を除く。)は九九万七八〇〇円である旨の内容虚偽の所得税の修正申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額四三八三万五〇〇〇円との差額四二八三万七二〇〇円を免れ

第二〇  駒井弘、同和会副会長村井英雄(以下、「村井」という。)及び渡守らと共謀の上、右弘の実父駒井平四郎が同五六年一二月二四日死亡したことに基づく右弘の相続財産にかかる相続税を免れようと企て、右弘の相続財産の実際の課税価格が一億七九〇七万一七四二円でこれに対する相続額は三五三四万五九〇〇円であるにもかかわらず、被相続人の右平四郎が同和産業から六七五〇万の債務を負担しており、右弘において右の債務を承継し全額支払った旨仮装するなどした上、同五七年六月二三日、所轄東山税務署において、同署署長に対し、右弘の相続財産の課税価格が一億一一五七万一七四二円でこれに対する相続税額は一五六六万八六〇〇円(ただし申告書には特別農地の評価の誤りのため課税価格が一億一〇四七万〇一四二円で相続税額は一五三九万二一〇〇円と記載)である旨の内容虚偽の相続税の申告書を提出し、もって不正の行為により相続にかかる正規の相続税額三五三四万五九〇〇円との差額一九六七万七三〇〇円を免れ

第二一  木下静男及び渡守らと共謀の上、

一  右木下がその所有する同市伏見区石田内里町四二番外二筆の山林を同五八年一月一九日二億円で売却譲渡したことに関して右譲渡にかかる所得税を免れようと企て、右木下の実際の五八年分分離課税の長期譲渡所得金額は一億六七〇三万四六〇〇円、総合課税(事業所得)金額は三〇万円で、これに対する所得税額は四八七八万三〇〇〇円であるにもかかわらず、ワールドが同和産業から三億円の借入れをし、その債務について右木下が連帯保証人となりワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡しその譲渡収入で同年四月一〇日に一億七六〇〇万円を履行したが、ワールドに対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどした上、同五九年三月一四日、所轄伏見税務署において、同署署長に対し、右木下の五八年分分離課税の長期譲渡所得金額は一三七万一九〇〇円、総合課税の総所得金額は三〇万円で、これに対する所得税額は八万五一〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額四八七八万三〇〇〇円との差額四八六九万七九〇〇円を免れ

二  右木下がその所有する同区石田内里町四二番一の山林を同五九年五月一五日二億〇五〇〇万円で売却譲渡したことに関して右譲渡にかかる所得税を免れようと企て、右木下の実際の五九年分分離課税の長期譲渡所得金額は一億八三一四万一八五〇円、総合課税の総所得(事業所得)金額は三〇万円で、これに対する所得税額は五二七二万九四〇〇円であるにもかかわらず、ワールドが同和産業から二億五〇〇〇万円の借入れをし、その債務について右木下が連帯保証人となりワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡しその譲渡収入で同年五月三〇日に一億七〇〇〇万円を履行したが、ワールドに対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどした上、同六〇年三月一三日、所轄伏見税務署において、同署署長に対し、右木下の五九年分分離課税の長期譲渡所得金額は一三三六万六八五〇円、総合課税の総所得金額は三〇万円で、これに対する所得税額は二四六万二〇〇〇円(ただし計算誤りにより二四六万一四〇〇円と記載)である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額五二七二万九四〇〇円との差額五〇二六七四〇〇〇円を免れ

第二二  小西英次、渡守及び同和会辰巳支部事務局長村井信秀(以下、「信秀」という。)らと共謀の上、右小西がその所有する京都府長岡京市今里三丁目一一番一外五筆の田及び山林を同五九年三月二二日から同年一一月一五日までの間に三億〇三一七万五〇〇〇円で売却譲渡したことに関して右譲渡にかかる所得税を免れようと企て、右小西の実際の五九年分分離課税の長期譲渡所得金額は二億七〇四五万六二五〇円、総合課税の総所得(配当所得、給与所得)金額は五三万六〇〇〇円で、これに対する所得税額(ただし源泉徴収分を除く。)は八三七〇万三〇〇〇円であるにもかかわらず、ワールドが同和産業から三億円の借入れをしその債務について右小西が連帯保証人となりワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡しその譲渡収入で同年一一月二〇日に二億四〇〇〇万円を履行したが、ワールドに対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどした上、同六〇年一月二二日、所轄右京税務署において、同署署長に対し、右小西の五九年分分離課税の長期譲渡所得金額は三八〇一万六二五〇円、総合課税の総所得金額は五三万六〇〇〇円で、これに対する所得税額(ただし源泉徴収分を除く。)は七五七万一五〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額八三七〇万三〇〇〇円との差額七六一三万一五〇〇円を免れ

第二三  村井幸男、渡守及び信秀らと共謀の上、右幸男がその所有する京都市伏見区醍醐合場町二八番外一筆の田につき同五七年一月一一日一億八二四九万円で売却する契約を締結して同月一六日その代金を受け取り、同五九年七月二日及び同年八月二日所有権移転登記をしたことから、右売却による譲渡益を五九年分の譲渡所得として申告するに際しその所得税を免れようと企て、右幸男の実際の五九年分分離課税の長期譲渡所得金額は一億七一〇七万四三五〇円、総合課税の総所得(事業所得)金額は損失四九五万一七二八円で、これに対する所得税額は四六六八万五六〇〇円であるにもかかわらず、ワールドが同和産業から二億円の借入れをしその債務について右幸男が連帯保証人となり、ワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡しその譲渡収入で同五七年四月三〇日に一億七五〇〇万円を履行したが、ワールドに対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどした上、同六〇年三月一八日、所轄伏見税務署において、同署署長に対し、右幸男の五九年分分離課税の長期譲渡所得金額は五八万二三五〇円で、これに対する所得税額はない旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額四六六八万五六〇〇円を免れ

第二四  掛川きみ子、渡守及び司法書士松本善雄(以下、「松本」という。)らと共謀の上、

一  右きみ子がその所有する京都府宇治市志津川南詰八番二外三筆の宅地などを同五七年一二月二七日九三六〇万円で売却譲渡したことに関して右譲渡にかかる所得税を免れようと企て、右きみ子の実際の五七年分分離課税の長期譲渡所得金額は八七〇八万三六五六円、総合課税の総所得(給与所得)金額は二三二万二〇〇〇円で、これに対する所得税額(ただし源泉徴収分を除く。)は二一九五万一三〇〇円であるにもかかわらず、ワールドが同和産業から九〇〇〇万円の借入れをし、その債務について右きみ子が連帯保証人となり、ワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡しその譲渡収入で同月二八日に七〇〇〇万円を履行したが、ワールドに対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどした上、同五八年三月一五日、所轄左京税務署において、同署署長に対し、右きみ子の五七年分分離課税の長期譲渡所得金額は一三〇一万〇〇七二円、総合課税の総所得金額は二三二万二〇〇〇円で、これに対する所得税額は二六二万四九〇〇円(ただし長期譲渡所得にかかる所得税金額の計算誤り及び住宅取得控除の適用誤りにより二五八万三九〇〇円と記載、源泉徴収分を除く。)である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額二一九五万一三〇〇円との差額一九三二万六四〇〇円を免れ

二  右きみ子の亡夫掛川庄五郎と先妻との間に生まれた長男掛川栄一がその所有する同市志津川南詰五番外三筆の宅地を同五七年一二月二七日九五〇〇万円で売却譲渡したことに関して、右きみ子において右栄一の代理人として同人の所得税確定申告をするに当たり右譲渡にかかる所得税を免れさせようと企て、同人の実際の五七年分分離課税の長期譲渡所得金額は八八一〇万〇二八七円、総合課税の総所得(給与所得)金額は二八四万六〇〇〇円で、これに対する所得税額(ただし源泉徴収分を除く。)は二二二五万〇二〇〇円であるにもかかわらず、ワールドが同和産業から九〇〇〇万円の借入れをしその債務について右栄一が連帯保証人となり、ワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡し、その譲渡収入で同月二八日に七〇〇〇万円履行したがワールドに対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどした上、同五八年三月一五日、横浜市保土ヶ谷区帷子町二-六所在所轄保土ヶ谷税務署において、同署署長に対し、右栄一の五七年分分離課税の長期譲渡所得金額は一四二六万六六三三円、総合課税の総所得金額は二八四万六〇〇〇円で、これに対する所得税額(ただし源泉徴収分を除く。)は二八五万三二〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額二二二五万〇二〇〇円との差額一九三九万七〇〇〇円を免れ

第二五  井上博文、渡守、松本芳憲及び宇津竹次郎らと共謀の上、右井上がその所有する京都市右京区西京極東川町八・九番合地外三筆の宅地を同五八年八月三一日二億〇〇七九万二四〇〇円で売却譲渡したことに関して右譲渡にかかる所得税を免れようと企て、右井上の五八年分分離課税の長期譲渡所得金額は一億八四二六万四〇三〇円、総合課税の総所得(不動産所得、給与所得)金額は六一六万九二〇〇円、山林所得金額は二八一万七五〇〇円で、これに対する所得税額(ただし源泉徴収分を除く。)は五七三五万五一〇〇円であるにもかかわらず、ワールドが同和産業から二億円の借入れをしその債務について右井上が連帯保証人となり、ワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡しその譲渡収入で同年一一月三〇日に一億七〇〇〇万円履行したがワールドに対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどした上、同五九年二月一四日、所轄右京税務署において、同署署長に対し、右井上の五八年分分離課税の長期譲渡所得金額は一四五六万四〇三〇円、総合課税の総所得金額は六一六万九二〇〇円、山林所得金額は二八一万七五〇〇円で、これに対する所得税額(ただし源泉徴収分を除く。)は三七三万四七〇〇円(ただし所得税額は三七三万四七四〇円と誤って記載)である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額五七三五万五一〇〇円との差額五三六二万〇四〇〇円を免れ

第二六  乗越清一、渡守及び松本らと共謀の上、右乗越がその所有する同市西京区桂乾町一三番一の宅地・建物を同五八年六月二八日一億五〇〇〇万円で売却譲渡したことに関して右譲渡にかかる所得税を免れようと企て、右乗越の実際の五八年分分離課税の長期譲渡所得金額は一億四一〇三万五一二五円で、これに対する所得税額は三九二五万七八〇〇円であるにもかかわらず、ワールドが同和産業から一億八〇〇〇万円の借入れをし、その債務について右乗越が連帯保証人となり、ワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡しその譲渡収入で同五八年八月一〇日に一億三〇〇〇万円を履行したがワールドに対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどした上、同五九年三月一四日、所轄右京税務署において、同署署長に対し、右乗越の五八年分分離課税の長期譲渡所得金額は一一五〇万円、総合課税の総所得金額は一〇七万五〇〇〇円で、これに対する所得税額は二二八万七六〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額三九二五万七八〇〇円との差額三六九七万〇二〇〇円を免れ

第二七  近藤傳次郎、村井、渡守、松本、惣司定次郎(以下、「惣司」という。)及び山中康雄(以下、「山中」という。)らと共謀の上、右近藤がその所有する大津市一里山五丁目字丸尾一六二七番地外五筆の畑及び田を同五八年一一月二一日及び同年一二月一三日合計一億七四四四万四七〇〇円で売却譲渡したことに関して右譲渡にかかる所得税を免れようと企て、右近藤の実際の五八年分分離課税の長期譲渡所得金額は一億二七二二万二四六五円、総合課税の総所得(不動産所得、給与所得)金額は二三〇万四九五八円で、これに対する所得税額(ただし源泉徴収分を除く。)は三五五七万四三〇〇円であるにもかかわらず、ワールドが同和産業から二億円の借入れをし、その債務について右近藤が連帯保証人となり、ワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡しその譲渡収入で同年一二月二八日に一億一二〇〇万円を履行したが、ワールドに対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどした上、同五九年三月一五日、同市中央四丁目六番五五号所在所轄大津税務署(以下、「大津税務署」という。)において、同署署長に対し、右近藤の五八年分分離課税の長期譲渡所得金額は一五二二万二四六五円、総合課税の総所得金額は二三〇万四九五八円(ただし老年者年金特別控除の適用誤りにより一六六万四〇五八円と記載)で、これに対する所得税額(ただし源泉徴収分を除く。)は三二九万一六〇〇円(ただし老年者年金特別控除及び老年者控除の適用誤りにより三一六万七四〇〇円と記載)である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額三五五七万四三〇〇円との差額三二二八万二七〇〇円を免れ

第二八  中村春造、村井、渡守、松本、惣司及び山中らと共謀の上、右中村がその所有する同市瀬田月輪町字中筋四一〇番外五筆の田及び畑を同五八年一二月一三日鐘紡不動産株式会社に合計二億八五四四万円で売却譲渡したことに関して右譲渡にかかる所得税を免れようと企て、右中村の実際の五八年分分離課税の長期譲渡所得金額は二億七〇一六万八〇〇〇円、総合課税の総所得(農業所得)金額は一二万一〇〇〇円で、これに対する所得税額は八七四八万七五〇〇円であるにもかかわらず、ワールドが同和産業から四億円の借入れをしその債務について右中村が連帯保証人となり、ワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡しその譲渡収入で同五九年一月二〇日に二億四〇〇〇万円を履行したが、ワールドに対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどした上、同年三月一五日、所轄大津税務署において、同署署長に対し、右中村の五八年分分離課税の長期譲渡所得金額は三〇一六万八〇〇〇円(ただし租税特別措置法三四条の二の適用誤りにより一五一六万八〇〇〇円と記載)、総合課税の総所得金額は一二万一〇〇〇円で、これに対する所得税額は五八六万四八〇〇円(ただし租税特別措置法三四条の二の適用誤りにより二八六万四八〇〇円と記載)である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の行為により右の正規の所得税額八七四八万七五〇〇円との差額八一六二万二七〇〇円を免れ

第二九  木村喜久治、村井、渡守、松本及び惣司らと共謀の上、右喜久治の実父木村喜平治が同五九年四月二六日死亡したことに基づく右喜久治の相続財産にかかる相続税を免れようと企て、右喜久治の相続財産の実際の課税価格が三億〇一八九万二四二九円で、これに対する相続税額は九一八〇万〇七〇〇円であるにもかかわらず、被相続人の右喜平治が同和産業から二億一〇〇〇万円の債務を負担しており、右喜久治において右債務を全額支払ったと仮装するなどした上、同年一〇月二五日、所轄大津税務署において、同署署長に対し、相続財産の課税価格が八七八八万五二三二円で、これに対する相続税額は九〇六万七七〇〇円である旨の内容虚偽の相続税の申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の相続税額九一八〇万〇七〇〇円との差額八二七三万三〇〇〇円を免れ

第三〇  奥村典子、奥村文浩、渡守、青山健造、岩崎義彦、上田幸弘及び戸山孝らと共謀の上、右典子の実父で右文浩の養父である奥村博司が同五九年四月二八日死亡したことに基づく右典子及び右文浩の各相続財産にかかる相続税を免れようと企て、右典子の相続財産にかかる実際の課税価格が一億九五六二万九三四三円でこれに対する相続税額は七四一九万八四〇〇円であり、右文浩の相続財産にかかる実際の課税価格が一億六六八七万二八四九円でこれに対する相続税額は六二九九万八六〇〇円であるにもかかわらず、被相続人の右博司が同和産業から二億九六五〇万円の債務を負担しており、右典子においてそのうちの一億五九〇〇万円を、右文浩において同じく一億三七五〇万円をそれぞれ承継したと仮装するなどした上、同年一〇月二九日、所轄宇治税務署において、同署署長に対し、右典子の相続財産にかかる課税価格が三六六二万九三四三円でこれに対する相続税額は三九八万四七〇〇円であり、右文浩の相続財産にかかる課税価格が三〇二万八三四九円でこれに対する相続税額は三三三万四二〇〇円である旨の内容虚偽の相続税の申告書を提出し、もって不正の行為により右各相続にかかる右典子の正規の相続税額七四一九万八四〇〇円との差額七〇二一万三七〇〇円を、右文浩の正規の相続税額六二九九万八六〇〇円との差額五九六六万四四〇〇円をそれぞれ免れ

たものである。

(証拠の標目)

(以下、検察官及び大蔵事務官に対する各供述調書は検調、大調と各略記し、また、大蔵事務官作成の脱税額計算書、証明書、査察官調査書、調査報告書、報告書及び確認書並びに各行政庁(区役所等を含む)の長作成の戸籍の謄抄本については、いずれも作成名義人を省略することにし、さらに、右脱税額計算書については、単に計算書と略記する。)

判示全事実につき

一  被告人鈴木及び同長谷部の当公判廷における各供述

一  被告人鈴木(一二通、検六七〇号、七四六ないし七四八号、七五二ないし七五六号、九二〇ないし九二二号)及び同長谷部(七通、検七七七号、七七八号、七七九ないし八〇一号、八〇三号、八〇五号)の各検調

一  証人今井正義及び同渡守秀治の当公判廷における各供述

一  内藤光義(四通、検九〇〇号、九〇二号、九〇三号、九〇六号)、天野利昭(検九一〇号)及び渡守秀治(三通、検九一四号、九一六号、九一七号)の各検調謄本(ただし、検九一〇号は原本)

犯行に至る経緯につき

一  被告人鈴木の各検調(九通、検六七一号、七四一ないし七四五号、七四九ないし七五一号)

一  内藤光義(検八九八号)及び渡守秀治(検九一八号)の各検調謄本

犯行に至る経緯及び判示第一六、第一七の事実につき

一  被告人鈴木の検調(検六七六号)

判示第一ないし一一、第一三ないし二三、第二四の一、第二五、二六及び第三〇の事実につき

一  報告書謄本(検六二四号)

判示第一、第一〇ないし一三及び第二一の事実につき

一  被告人長谷部の検調(検八一〇号)

判示第一事実につき

一  被告人鈴木(検六五一号)及び同長谷部(四通、検六九三ないし六九五号、八〇六号)の各検調

一  中川綾子(検四号)、善辻さき江(検五号)、船野里子(検六号)、中川良雄(検七号)、西川平(検八号)及び中川増穂(七通、検九ないし一五号)の各検調謄本(ただし、検八号は抄本)

一  計算書(検一号)、証明書(検二号)及び戸籍(検三号)の各謄本

判示第二、第三、第五ないし一九、第二一ないし二三、第二四の一及び第二五ないし三〇の事実につき

一  内藤光義の検調謄本(検八九九号)

判示第二、第三、第八、第九、第一五、第一八、第二二、第二五及び第三〇の事実につき

一  被告人長谷部の検調(検八一三号)

判示第二事実につき

一  被告人鈴木(三通、検六五二ないし六五四号)及び同長谷部(検六九六号)の各検調

一  岩崎義雄の大調謄本(検二五号)

一  長尾耕司(検二六号)、森正美(検二七号)、佐藤東一(検二九号)、松好千秋(検三〇号)、大塚拓男(二通、検三一号、三二号)、椿野則之(検三五号)、山崎しゆう(二通、検三六号、三七号)、山崎衣弘(検三八号)、山崎賢二(二通、検三九号、四〇号)、久門田直子(検四一号)、山崎章(四通、検四二ないし四五号)、及び山内健一(四通、検四六ないし四九号)の各検調謄本

一  計算書(検一六号)、証明書(検一七号)及び査察官調査書(五通、検一八ないし二二号)の各謄本

判示第三ないし第五の事実につき

一  被告人鈴木(検六五五号)及び同長谷部(二通、検七〇〇号、七〇一号)の各検調

判示第三、第一四及び第二六ないし二八の事実につき

一  被告人長谷部の検調(検八一一号)

判示第三事実につき

一  被告人鈴木(二通、検六五六号、七六五号)及び同長谷部(二通、検六九七号、七八二号)の各検調

一  坂口透(検五四号)、林昌男(検五五号)、林キク(検五六号)、小嶋俊平(検五七号)、篠原孝壽(検五八号)、辻井哲男(三通、検五九ないし六一号)、及び林康司(五通、検六二ないし六六号)の各検調謄本(ただし検六〇号、六一号については抄本)

一  計算書(二通、検五〇号、五一号)、証明書(検五二号)及び戸籍(検五三号)の各謄本

判示第四、第五及び第二五の事実につき

一  被告人長谷部の検調(検八〇九号)

判示第四及び第五の事実につき

一  被告人鈴木(検七六三号)及び同長谷部(二通、検七八〇号、八〇七号)の各検調

判示第四事実につき

一  被告人鈴木(検六五七号)及び同長谷部(検六九八号)の各検調

一  中村ハナ(検七〇号)、中川君子(検七一号)、宮本清子(検七二号)、中村好子(検七三号)、北阪とみ枝(検七四号)、辻孫治(検七五号)、小野義雄(三通、検七六ないし七八号)、辻井哲男(三通、七九ないし八一号)、中村利秋(五通、検八二ないし八六号)及び中村艶子(三通、検八七ないし八九号)の各謄本

一  計算書(検六七号)、証明書(検六八号)及び戸籍(検六九号)の各謄本

判示第五事実につき

一  被告人鈴木(検六五八号)及び同長谷部(検六九九号)の各検調

一  高橋とみよ(二通、検九三号、九四号)、池田文夫(二通、検九五号、九六号)、小野義雄(四通、検九七ないし一〇〇号)、辻孫治(検一〇一号)、辻井哲男(四通、検一〇二ないし一〇五号)及び高橋義治(三通、検一〇六ないし一〇八号)の各検調謄本

一  計算書(検九〇号)、証明書(検九一号)及び戸籍(検九二号)の各謄本

判示第六及び第八の事実につき

一  被告人長谷部の検調(検七〇六号)

判示第六事実につき

一  被告人鈴木(検六五九号)及び同長谷部(検七〇二号)の各検調

一  山田男(検一一四号)、西川平(検一一五号)、西村昭和(三通、検一一六ないし一一八号)、西村博文(三通、検一一九ないし一二一号)、西村博(二通、検一二二号、一二三号)及び山田廣子(検一二四号)の各検調謄本

一  計算書(三通、検一〇九ないし一一一号)、証明書(検一一二号)及び戸籍(検一一三号)の各謄本

判示第七及び第九の事実につき

一  被告人鈴木(二通、検六六三号、六六四号)及び同長谷部(二通、検七〇八号、七〇九号)の各検調

判示第七事実につき

一  被告人鈴木(検六六〇号)及び同長谷部(七〇三号)の各検調

一  津田辰郎(検一二七号)、榊庄太郎(検一二八号)、石垣実(検一二九号)、松井祥蔵(検一三〇号)、須賀金光(検一三一号)、村尾孝信(検一三二号)、安田治男(二通、検一三三号、一三四号)、安田儀一郎(二通、検一三五号、一三六号)、飯野三(検一三七号)、藤本勝英(五通、検一三八ないし一四二号)、中村清一(四通、検一四三ないし一四六号)の各検調謄本

一  計算書(検一二五号)及び証明書(検一二六号)の各謄本

判示第八事実につき

一  被告人鈴木(検六六一号)及び同長谷部(検七〇四号)の各検調

一  辻村武二(検一四九号)、中西春江(検一五〇号)、堀尾源三郎(五通、検一五一ないし一五五号)、西村昭和(六通、検一五六ないし一六一号)及び中西仙太郎(七通、検一六二ないし一六八号)の各検調謄本

一  計算書(検一四七号)及び証明書(検一四八号)の各謄本

判示第九ないし一五の事実につき

一  被告人長谷部の検調(検七一〇号)

判示第九事実につき

一  被告人鈴木(検六六二号)及び同長谷部(検七〇五号)の各検調

一  廣田富司(検一七一号)、阪本節子(二通、検一七二号、一七三号)、海老名昭宏(二通、検一七四号、一七五号)、岩崎静枝(検一七六号)、林博(検一七七号)、村上浩(検一七八号)、村上治(四通、検一七九ないし一八二号)、中村源治郎(三通、検一八三ないし一八五号)、今井正義(二通、検一八六号、九一一号)、藤本勝英(検一八七号)及び有田峻宏(三通、検一八八ないし一九〇号)の各検調謄本

一  計算書(検一六九号)及び証明書(検一七〇号)の各謄本

判示第一〇の事実につき

一  被告人鈴木(検六六五号)及び同長谷部(検七一一号)の各検調

一  神山君彦の各大調謄本(三通、検一九三ないし一九五号)

一  矢作正和(検一九六号)、田代和子(検一九七号)、今井正義(七通、検一九八ないし二〇四号)、香山利次(二通、検二〇五号、二〇六号)及び西村勝雄(六通、検二〇七ないし二一二号)の各検調謄本

一  計算書(検一九一号)及び証明書(検一九二号)の各謄本

判示第一一及び第一二の事実につき

一  被告人鈴木の検調(検六六六号)

判示第一一の事実につき

一  被告人長谷部(検七一二号)の検調

一  久貝義雄(検二一五号)、倉橋嘉弘(二通、検二一六号、二一七号)、辻喜男(二通、検二一八号、二一九号)、辻道子(検二二〇号)、今井正義(検二二一号)及び辻逸郎(七通、検二二二ないし二二八号)の各検調謄本

一  計算書(検二一三号)及び証明書(検二一四号)の各謄本

判示第一二の事実につき

一  被告人長谷部(検七一三号)の検調

一  中嶋純次(検二三一号)、今井正義(四通、検二三二ないし二三五号)、吉田弘幸(検二三六号)、辻逸朗(五通、検二三七ないし二四一号)、小林ユリ子(検二四二号)及び小林経男(四通、検二四三ないし二四六号)、各検調謄本

一  計算書(検二二九号)、証明書(検二三〇号)及び報告書(検六二五号)の各謄本

判示第一三の事実につき

一  被告人鈴木(検六六七号)及び同長谷部(検七一四号)の各検調

一  牧良次(二通、検二四九号、二五〇号)、吉田弘幸(三通、検二五一ないし二五三号)、辻逸朗(九通、検二五四ないし二六二号)、今井正義(五通、検二六三ないし二六七号)、中嶋純次(五通、検二六八ないし二七二号)の各検調謄本

一  計算書(検二四七号)及び証明書(検二四八号)の各謄本

判示第一四の事実につき

一  被告人鈴木(検六六八号)及び同長谷部(検七一五号)の各検調

一  田代和子(検二七六号)、丹羽徹(検二七七号)、加藤嘉壽子(検二七八号)、寺石源太郎(検二七九号)、森岡富士雄(検二八〇号)、今井正義(五通、検二八一ないし二八五号)及び西村勝雄(六通、検二九一ないし二九六号)の各検調謄本

一  加藤寿雄の各大調謄本(五通、検二八六ないし二九〇号)

一  計算書(検二七三号)及び証明書(二通、検二七四号、二七五号)の各謄本

判示第一五、第二一、第二二及び第二三の事実につき

一  被告人長谷部の検調(検八〇四号)

判示第一五、第二一及び第二三の事実につき

一  被告人長谷部の検調(第八一四号)

判示第一五の事実につき

一  被告人鈴木(二通、検六六九号、六七三号)及び同長谷部(検七一六号)の各検調

一  辻逸朗(六通、検二九九ないし三〇四号)、今井正義(検三〇五号)及び安田由紀夫(五通、検三〇六ないし三一〇号)の各検調謄本

一  計算書(検二九七号)及び証明書(検二九八号)の各謄本

判示第一六の事実につき

一  被告人鈴木(検六七五号)及び同長谷部(二通、検七一七号、七一八号)の各検調

一  田代和子(検三一三号)、谷本一男(検三一四号)、佐藤雄(検三一五号)及び小原靖弘(二通、検三一八号、三一九号)の各検調謄本

一  黒川敏(検三一六号)及び寺本広嗣(検三一七号)の各大調謄本

一  計算書(検三一一号)及び証明書(検三一二号)の各謄本

判示第一七の事実につき

一  被告人長谷部(二通、検七一九号、七二〇号)の各検調

一  西川平(二通、検三二四号、三二五号)、林政男(検三二六号)、小原靖弘(二通、検三二七号、三二八号)、澤田圭司(二通、検三二九号、三三〇号)、澤田昭子(二通、検三三一号、三三二号)及び濱元涼子(検三三三号)の各検調謄本

一  計算書(二通、検三二〇号、三二一号)、証明書(検三二二号)及び戸籍(検三二三号)の各謄本

判示第一八の事実につき

一  被告人鈴木(検六七七号)及び同長谷部(検七二一号)の各検調

一  田代和子(検三三六号)、中嶋健次(検三三七号)、笹本弘(三通、検三三八ないし三四〇号)、原田実(検三四一号)、荒木信一(二通、検三四二号、三四三号)及び荒木ヒサノ(六通、検三四四ないし三四九号)の各検調謄本

一  計算書(検三三四号)及び証明書(検三三五号)の各謄本

判示第一九の事実につき

一  被告人鈴木(検六七八号)及び同長谷部(検七二二号)の各検調

一  孫仲奎(検三五二号)、藤原作男(検三五三号)、玉田善治(検三五四号)及び山本壽(四通、検三五五ないし三五八号)の各検調謄本

一  計算書(検三五〇号)及び証明書(検三五一号)の各謄本

判示第二〇、第二二、第二三及び第二七ないし二九の事実につき

一  被告人長谷部の各検調(二通、検七二九号、七三〇号)

判示第二〇の事実につき

一  被告人鈴木(検六七九号)及び同長谷部(検七二三号)の各検調

一  駒井とも子(検三六二号)、西村トシエ(検三六三号)、駒井秀雄(検三六四号)、駒井陽子(検三六五号)、西川平(二通、検三六六号、三六七号)、駒井弘(二通、検三六八号、三六九号)、村井信秀(二通、検三七〇号、三七一号)及び村井英雄(四通、検三七二ないし三七五号)の各検調謄本

一  計算書(検三五九号)、証明書(検三六〇号)及び戸籍(検三六一号)の各謄本

判示第二一の事実につき

一  被告人鈴木(検六八〇号)の検調

一  栗山正廣(検三八四号)及び木下喜代美(検三八六号)の各大調謄本

一  木下静男の検調(検三九三号)及び大調(二通、検三九一号、三九二号)の各謄本

判示第二一の一の事実につき

一  被告人鈴木(検六八一号)及び同長谷部(検七二四号)の各検調

一  木下里美(検三八八号)及び木下静男(検三九四号)の各検調謄本

一  深川竣生の各大調謄本(二通、検三八〇号、三八一号)

一  計算書(検三七六号)及び証明書(検三七七号)の各謄本

判示第二一の二の事実につき

一  被告人長谷部(検七二五号)の検調

一  安藤謙(検三八七号)、村井信秀(二通、検三八九号、三九〇号)及び木下静男(三通、検三九五ないし三九七号)の各検調謄本

一  床尾芬(二通、検三八二号、三八三号)及び藤本康則(検三八五号)の各大調謄本

一  計算書(検三七八号)及び証明書(検三七九号)の各謄本

判示第二二の事実につき

一  被告人鈴木(検六八二号)及び同長谷部(二通、検七二六号、七三一号)の各検調

一  松山元(検四〇〇号)、松山忠圀(検四〇一号)、沢井利之(検四〇二号)、岩井富代美(検四〇三号)、村井信秀(五通、検四〇四ないし四〇八号)、小西英次(五通、検四〇九ないし四一三号)及び内藤光義(検九〇五号)の各検調謄本

一  計算書(検三九八号)及び証明書(検三九九号)の各謄本

判示二三の事実につき

一  被告人鈴木(検六八三号)及び同長谷部(二通、検七二七号、七二八号)の各検調

一  安藤謙(二通、検四一六号、四一七号)、須田良蔵(検四一八号)、村井正美(検四一九号)、村井ひさみ(検四二〇号)、村井信秀(五通、検四二一ないし四二五号)、村井幸男(七通、検四二六ないし四三二号)及び内藤光義(検四三三号)の各検調謄本

一  計算書(検四一四号)及び証明書(検四一五号)の各謄本

判示第二四及び第二六ないし二九の事実につき

一  被告人長谷部の検調(検七三五号)

判示第二四の事実につき

一  被告人鈴木(検六八四号)及び同長谷部(検七三二号)の各検調

一  篠田浩(二通、検四三八号、四三九号)、鉢呂靖彦(四通、検四四〇ないし四四三号)、辻村七郎(四通、検四四四ないし四四七号)、木村トミ子(検四四八号)、田中隆(検四四九号)、掛川栄一(検四五〇号)、村井英雄(検四五一号)、松本善雄(五通、検四五二ないし四五六号)及び掛川きみ子(八通、検四五八ないし四六五号)の各検調謄本

一  五木由次男の大調謄本(検四五七号)

判示第二四の一の事実につき

一  計算書(検四三四号)及び証明書(検四三五号)の各謄本

判示第二四の二の事実につき

一  計算書(検四三六号)、証明書(検四三七号)及び報告書(検六二六号)の各謄本

判示第二五及び第三〇の事実につき

一  渡守秀治の検調謄本(検九一三号)

判示第二五の事実につき

一  被告人鈴木(検六八五号)及び同長谷部(二通、検七三三号、七七六号)の各検調

一  井上博文の検調(一〇通、検四七四ないし四八三号)及び大調(六通、検四六八ないし四七三号)の各謄本

一  松井婚次(検四八四号)、桐村齢子(検四八五号)、宇津川次郎(二通、検四八六号、四八七号)、渡守秀治(検四八八号)及び松本芳憲(二通、検四八九号、四九〇号)の各検調謄本

一  計算書(検四六六号)及び証明書(検四六七号)の各謄本

判示第二六及び第二七の事実につき

一  被告人長谷部の検調(検七七四号)

判示第二六の事実につき

一  被告人鈴木(検六八六号)及び同長谷部(検七三四号)の各検調

一  中川修(五通、検四九三ないし四九七号)、松本善雄(七通、検四九八ないし五〇四号)及び乗越清一(六通、検五〇五ないし五一〇号)の各検調謄本

一  計算書(検四九一号)及び証明書(検四九二号)の各謄本

判示第二七ないし二九の事実につき

一  村井英雄の各検調謄本(三通、検六四〇号、六四一号、六四六号)

一  報告書謄本(検六二七号)

判示第二七及び第二八の事実につき

一  被告人鈴木(検六八七号)及び同長谷部(二通、検七三六号、七三七号)の各検調

一  惣司定次郎(検六三〇号)、松本善雄(五通、検六三二ないし六三六号)及び村井英雄(検六四四号)の各検調謄本

判示第二七及び第二九の事実につき

一  惣司定次郎の検調謄本(検六二九号)

判示第二七の事実につき

一  法澤剛雄(検五一四号)、佐藤潔(二通、検五一五号、五一六号)、山中隆雄(三通、検五一七ないし五一九号)、松本善雄(八通、検五二〇ないし五二六、六三一号)、村井英雄(二通、検六四二号、六四三号)、惣司定次郎(六通、検五二七ないし五三二号)、近藤正夫(三通、検五三三ないし五三五号)、田代和子(二通、検五三六号、五三七号)及び近藤傳次郎(五通、検五三八ないし五四二号)の各検調謄本

一  計算書(検五一一号)、証明書(検五一二号)及び報告書(検五一三号)の各謄本

判示第二八の事実につき

一  山中隆雄(五通、検五四五ないし五四九号)、松本善雄(五通、検五五〇ないし五五四号)、村井英雄(二通、検五五五号、五五六号)、惣司定次郎(一〇通、検五五七ないし五六六号)及び中村春造(七通、検五六七ないし五七三号)の各検調謄本

一  計算書(検五四三号)及び証明書(検五四四号)の各謄本

判示第二九及び第三〇の事実につき

一  被告人長谷部の検調(検八一二号)

判示第二九の事実につき

一  被告人鈴木(検六八八号)及び同長谷部(二通、検七三八号、七七五号)の各検調

一  木村十重(検五七七号)、谷澤喜子(検五七八号)、久保愛子(検五七九号)、片岡由紀子(検五八〇号)、船橋克典(検五八一号)、惣司定次郎(六通、検五八二ないし五八六号、六二八号)、木村保子(二通、検五八七号、五八八号)、木村喜久治(五通、検五八九ないし五九三号)、松本善雄(七通、検五九四ないし五九八号、六三八号、六三九号)及び村井英雄(二通、検六四五号、六四七号)の各検調謄本

一  計算書(検五七四号)、証明書(検五七五号)及び戸籍(検五七六号)の各謄本

判示第三〇の事実につき

一  被告人鈴木(検六八九号)及び同長谷部(検七三九号)の各検調

一  中川敏夫(検六〇二号)、藤井孝三(検六〇三号)、小川弘(検六〇四号)、上田幸弘(四通、検六〇五ないし六〇八号)、戸山孝(四通、検六〇九ないし六一二号)、奥村文浩(二通、検六一三号、六一四号)、奥村典子(二通、検六一五号、六一六号)、青山健造(二通、検六一七号、六一八号)、渡守秀治(二通、検六一九号、六二〇号)及び岩崎義彦(三通、検六二一ないし六二三号)の各検調謄本

一  計算書(検五九九号)、証明書(検六〇〇号)及び戸籍(検六〇一号)の各謄本

(補足説明)

弁護人らは、いずれも、被告人らのなした本件各税の申告行為は、税務当局が旧同和事業特別措置法(以下、「措置法」という。)及び官総二一六「同和問題について」と題する国税庁長官通達(以下、「長官通達」という。)と大阪国税局長との間で取り交わされた確認事項(以下、「確認事項」という。)をも参考にして、同和会に対し同和地区住民に対する行政的配慮として認めて来たものであり、しかも、本件で問題とされている、所得税法六四条二項、相続税法一三条の規定を利用した申告方法についても、当局の方から右方法により申告するよう指導されたためこれに従ったもので、これが適法な行政配慮によるものであることは、被告人らが同様の申告方法を繰り返して来たのに、一度として税務当局から調査されたことがないこと、同盟が過去数一〇年来零申告を続けていながらこれが問題とされていないこと等からも十分裏付けられ、被告人らの本件各所為は法に認められた適法なものである。仮に、右のように言えないとしても、このような事情のもとでは、被告人らには右申告が不正手段によって税を免れる犯意はなく、違法性の認識及びその認識可能性はなかったとも主張するが、判示事実は前掲各関供証拠によってその証明は十分であり、なお補足して、以下、当裁判所の判断を簡単に説明しておく。

まず、被告人らの右各税の申告行為が適法であるか否かを、架空債務を計上するなど虚偽の方法によった点はさておくとして、検討するに、我が国においては、租税法律主義(憲法八四条)がとられ、税の減免・控除については法律上の根拠が必要であるところ、措置法は、その一条に掲げた目的からも明らかなように、歴史的、社会的理由から、生活環境等の安定・向上が阻害されている地域住民の経済力の培養等を目的として、国及び地方公共団体に対してこれを可能とするよう条件整備をするものであり、その目的と減税とは直接関係はなく、同和対策事業の内容を規定する六条を始め、他の条文をみても、措置法の規定に同和地区住民に対する税の軽減を要請していると解することのできるものはなく、措置法がそのような減税を規定するものとは到底考えられない。次に、長官通達についても、弁護人らは、「同和地区納税者に対しては今後とも実情に則した課税を行うよう配慮すること。」という同通達二項の規定をとらえ、これをもって憲法八四条にいう「法律の定める条件」に当たるものとして、右減税の根拠であると主張するが、右二項の規定は、同和地区納税者が社会的に言われなき差別を受け、経済的に劣位に置かれ勝ちな実情に鑑み、所得の把握等に際しては安易に一般的な基準に頼ることなく、右のような事情も十分考慮し適切な課税をすることを要請していることは文理上明白であって、これが減税を規定していると解することはできない上、長官通達はそれ独自では減税の根拠とはなりえないことはもちろん、先に見たように、措置法は減税を要請しておらず、現行法上、他にこれを要請している法律はないから、法律の定める条件にも当たらないものである。さらに、措置法、長官通達の精神に基づく、所轄税務署長の行政処分行為として、同和会に対しても、同盟の確認事項に定めたと同様に取り扱う旨確認したことをもって、本件各税の申告行為の適法性の根拠であると弁護人らは主張するので、そのような確認が同和会と税務当局との間で取り交わされたかどうかをみてみると、関係証拠によれば、昭和五五年一二月二日、被告人長谷部純夫が当時の同和会事務局長槍丸富貴雄らと共に大阪国税局同和対策室において同室係長糸田武久らと面談したこと、続いて、同月八日、被告人両名が右槍丸らと共に上京税務署長室において署長島岡茂、副署長松吉良雄、総務課長河辺康雄らと面談したことはいずれも明らかであり、それぞれにおいて同和会側から税務当局に対して納税に関する要望をしたことが認められるが、双方間で何からの合意又は確認の文書を取り交わした形跡は全くない。口頭による合意又は確認についてはどうであるか、まず、大阪国税局との間ではどうであったかをみてみると、面談に参加した証人渡守秀治や被告人長谷部純夫は、国税局側が同和会についても同盟の大阪府企業連合会、京都府企業連合会に対すると同様に対応していくことを約すると共に、国税局側から、同盟のようないわゆる零申告ではしんどいので正規税額の五パーセントでも一〇パーセントでも納めてもらいたい旨の要望があったというのであるが、証人糸田武久は、国税局は課税について各税務署を指示する機関ではないので、減税について本当に必要があるのであれば所轄税務署に行って話してもらいたい旨話したと思う、そもそも確認事項自体、同盟が要望事項をまとめたものに過ぎないと述べ、合意や確認があったことを否定している。そこでまず、確認事項をみてみると、同和会の資料によれば、大阪国税局長と同盟中央本部及び前示大阪府企業連合会との間で、同四三年一月三〇日以降について七項目の事項の、同局長と同盟近畿ブロックとの間で、同四四年一月二三日以降について三項目の事項の、さらに、同局長と同盟中央本部及び前示京都府企業連合会との間で、前二回の確認事項に基づく税務対策を行うこと等三項目の確認事項の確認を取り交わしたというのであるが、基本となる右七項目の確認事項のうち、その二項目では同和対策控除の必要性のあることを認め租税特別措置法の法制化に努める、その間の処置として局長権限による内部通達によってそれにあてる、とあるが、もともと法律事項となるべき同和地区住民に対してのみ認める同和控除を法律が制定するまで局長の通達でまかなうのは租税法律主義に反するもので、できないことであり、その三項では、右各企業連合会を窓口として提出される自主申告については、白、青色を問わず、全面的にこれを認める、とあるが、国税局がそのようにいわば審査権を放棄することが許されるのか疑わしいし、その七項では、協議団本部長(昭和四五年からは国税不服審判所)の決定でも局長権限によって変更するとあるが、これは、現在はもちろん同四九年二月一四日及び同五五年一二月当時も国税通則法一〇二条一項の明文に反しできないことが明らかであり、同四三年一月当時も同様、制度上不可能であったと思われるのであって、これらの点に照らしても、国税局がこれらを認めるとは到底考え難く、右糸田の言うようにそれは単に要望事項をまとめたものに過ぎない蓋然性が高く、その他国税局の機構の制約等を考えると、糸田証言の方が被告人長谷部純夫の供述等と対比してより信用性が大であると言うべきであって、同被告人らの言うような、前示同盟の確認事項に基づくと同様に同和会にも対応する旨の、国税局との合意又は確認及び国税局側からの前記申入れがあったものとは到底認めることはできない。

次いで、上京税務署における同署幹部との面談の際における口頭の合意又は確認等の有無についてみてみるに、まず、同和会でまとめた、その際の税務当局との間で確認されたという事項は、(一)同和会が指導し、同和会が窓口として提出される。個人法人を問わず、申告は、各署と協議し、協議完了したものについては全面的に認める、ただし内容調査の必要がある場合は同和会を通じ本部と協力して調査に当たる、(二)府下一三税務署の窓口は大阪国税局の指導どおりに各署総務課長とするの二点であるところ、証人河辺康雄は、右面談の際、同和会側から白、青色を問わず申告したものは認めてほしい旨の申入れがあったが、税務当局としては長官通達二項に則って課税する、それ以上は答えられない旨の返事をしたと言う。もっとも、右河辺証言によると、同和会が窓口となる申告について調査の必要がある場合には、同盟については同盟にその旨連絡することもある取扱いとなっており、同和会についても同様に取り扱うこと、及び申告書の受付けは各署総務課長の職掌であるから申告書受付窓口を各署総務課長とすることの二点は上京税務署側においてその場で了承したことが認められるものの、これは同和会でまとめた右二項目とはかなりニュアンスを異にしており、まして、被告人長谷部純夫が供述する、確認事項のコピーを上京税務署側に示した上でその確認をえたということ、及び上京税務署側からも正規税額の五ないし一〇パーセントの納税はしてもらいたい旨の要望があったということは、これまで述べて来たところに照らしても、さらに、同和会でまとめた確認事項中にはそのような事項は全く含まれていないことに照らしても、同被告人らの供述を直ちに信用することはできないので、これらのことを認めることはできない。

ところで、被告人両名らは、本件各申告は税務署側の行政指導によるものであると言う。とりわけ、被告人長谷部純夫は受け皿としての同和産業設立の示唆を税務当局から受けたと言うのであるが、同被告人に示唆したとして同被告人が名前を挙げる当時右京税務署総務課長佐々木敏雄あるいは同署資産税第一部門統括官松本庄八はいずれもこれを否定している。そこで検討するに、そもそも同被告人らの言うような減税措置が同和行政の一環として可能であれば、同和産業などといういわゆる受け皿となる会社を設立した上で仮装債務を計上し、同和減税とは全く関わりのない所得税法六四条二項又は相続税法一三条一項一号を適用する必要は全くないのであるから、税務署側からいわゆる受け皿となる会社の設立を示唆し、申告に当たってはつじつまを合わせるよう行政指導するということは自己矛盾であって、被告人長谷部純夫らの供述等はいずれもこの点に関して信用することができず、右行政指導又は示唆があったことも認められない。

右のとおり、各面談の際の合意又は確認を前提とした所轄税務署長の行政処分行為である主張はその前提を欠き認めることができず、行政指導又は示唆もまた認められないところ、そもそも本件各税の申告は、同和控除によるものではなく、判示のとおり仮装債務を計上した違法な方法によるものであって、措置法、長官通達と何の関わりもないというべきであって、これらが違法であることは明らかである。

そこで進んで、被告人両名の本件各犯行についての犯意の有無を検討するに、まず、所得税法二三八条一項又は相続税法六八条一項の各ほ脱行為の犯意は、税を免れる手段方法が不正であることを認識していれば足り、必ずしもその具体的手段方法まで知らなければならないものではないと解すべきところ、被告人長谷部純夫は本件各ほ脱の中心的存在として各申告書の作成等に関わって同和産業に対する仮装債務を計上する手段方法を用いていたのであって、本件犯行の範囲を有していたことは明白である。被告人鈴木元動丸は、本件各犯行についての個々の具体的申告内容まではたとえ知らなかったにしても、被告人長谷部純夫から種々報告を受けていた上、いわゆる受け皿とした同和産業の設立に参画して自らその代表取締役となり、また被告人長谷部純夫と共に同和会に対するカンパ金の配分を決めるなど本件各犯行に深く関わっていたもので、その手段方法が不正であることを知っていたことは優に認められる。

もっとも、被告人両名、とりわけ被告人長谷部純夫はかかる手段方法は税務署側の指導ないし示唆に基づくものであるから適法であると信じていた旨弁解するが、そのような指導ないし示唆を認めることができないことは先に述べたとおりであって、同被告人の右弁解は前提を欠き信用できないばかりか、同被告人は、昭和五六年九月ころ税理士西川平に対し本件脱税への参加を勧誘した際、同税理士が渋るや、同税理士の名前を絶対に出さない旨約束してこれに参加させており、判示第一六の犯行の際には、小原靖弘に対して「自分がうまい何合にやってやるから任せてくれないか。」と申し向けて勧誘し、同人に対しては税務署との直接の対応は避けさせるべくはかったり、また、同人から判示第一七の澤田昭子らの納税申告依頼のあっせんを受けた際には右澤田からのカンパ金の中から一二〇〇万円もの謝礼を右小原に支払っており、そもそも右小原は当時同人や右澤田らの分の申告が不正の手段方法によるものであることは知っていたというのである。そして、被告人長谷部純夫は、本件各税の申告に当たって、同和地区外の住民が納税義務者であるときでも同和地区出身者かどうか格別確認しておらず、もちろん納税義務者が同和会会員に限定しておらず、さらに、同和会支部長らから依頼されれば納付税額を適宜下げたり、二件はいわゆる零申告にしているものであって、加うるに、被告人長谷部純夫らは、同盟のいわゆる零申告について、同盟のごり押し、行政が目をつぶっているのか甘くしているか、あるいは事務処理能力のない結果である旨述べており、これらの点に徴しても被告人長谷部純夫の右弁解は到底信用できず、むしろ同被告人は当初からその手段方法が不正であることを認識していたことが十分窺われるものであって、同被告人から報告を受けていた被告人鈴木元動丸についても同様である。

弁護人らは、本件における税務署側の対応を指摘するが、税務当局が確認事項を確認等したこと、受け皿会社の設立、申告書のつじつま合わせといった行政指導ないし示唆がなされたとも認め難いことは先に述べたとおりである。しかし、前示罪となるべき事実第一ないし三〇の各不正申告を受けた税務署の対応をみてみると、例えば、そのうち最も多い不正申告を受けた右京税務署の場合、同五七年三月から同六〇年三月までの四か年次で一二件に上る不正申告を受け、仮装債務総額は二一億〇八〇〇万円という巨額に達し、これがいずれも同和産業を債権者とするもので、不正申告の方法はおおむね同一形態によっており、被告人長谷部純夫らの作成した内容虚偽の領収書と関係書類が各税の申告書に添付されているに過ぎず、そのため低減する額が極めて多く、その率も九〇パーセント前後と高率であるにもかかわらず、一件として納税者本人に対する調査すらも行われた形跡が窺われず、前記西川税理士がこのような不正申告はたとえ一件であっても税務当局が直ちにその不正を看破してしまうとして被告人長谷部純夫からの前記勧誘を受けることを渋っていたことに照らしても、当裁判所としては右京税務署のかかる対応については極めて大きな疑問を抱かざるをえない。ほ脱犯の時効期間である五ないし七年間に調査すれば足りると弁解した税務署側の証人もいるが、税務関係書類の保存期間が五年であるということに照らし、右証人の弁解は言い逃れに過ぎず、税務当局の甚だしい怠慢あるいは既に見て来た諸事情を考え合わすと、同和会との悶着を恐れて安易な事なかれ主義的態度からこれを放置していたのではないかと見ざるをえないと言わざるをえないけれども、税務当局がかかる違法な申告を指導していたことはもちろん、積極的に容認してこれが慣行化していたとまでは認めることはできない。また、同盟が過去数一〇年来零申告を繰り返して来たのに問題とされたことがないとの点についても、被告人両名らはその旨供述し、その旨確信しているというが、客観的証拠はなく、むしろ、被告人長谷部純夫は同盟でも納税している例もあるとも述べており、証人木村美代志の供述に照らしても、この点に関しても、被告人両名らの供述を直ちに信用することはできない。

以上みたところによれば、弁護人らの主張はいずれもその前提を欠き、認めることはできない。

なお、本件各犯行は、いずれも、被告人両名と本件各納税義務者とその代理人・従業者並びにその各仲介者との順次共謀による犯罪であるところ、共犯者である納税義務者とその代理人・従業者において、申告書の控えを被告人長谷部純夫又は仲介者らから受け取り、その不正申告の具体的内容を知るのは右申告の後になる場合もある。例えば判示第二二の納税義務者小西英次の場合がこれに当たるが、かかる場合にあっても、右納税義務者らにおいて、不正申告の時点までにその具体的内容まで知らなくても、何らかの不正手段方法により税を免れることを認識しておれば足りるのであって、右小西についても同人は検察官に対する各供述調書において、当初から何らかの不正手段・方法により税を免れることを確認していた旨認めており、同調書はいずれもその内容が自然かつ合理的で十分信用できるものであるから同人の認識には欠けたところはなく、同人と被告人両名らとの順次共謀の成立に合理的な疑いをさし挟む余地はない。

(法令の適用)

被告人両名の判示第一、第四ないし第六、第一七、第二〇、第二九及び第三〇の各所為並びに判示第三の所為のうち林康司の相続税を免れた所為はいずれも刑法六五条一項、六〇条、相続税法六八条一項に、判示第二及び第二四の二の各所為は刑法六五条一項、六〇条、所得税法二四四条一項、二三八条一項に、判示第三の所為のうち林昌男の相続税を免れさせた所為は刑法六五条一項、六〇条、相続税法七一条一項、六八条一項に(なお、納税義務者から納税事務処理を委任された者が脱税をした場合、たとえ納税義務者が事業主でなくとも、右受任者が「人の代理人」として右行為に及んだ以上、所得税法二四四条一項、相続税法七一条一項に各該当することは明らかである。)、判示第七ないし第一六、第一八、第一九、第二一、第二二、第二三、第二四の一及び第二五ないし二八の所為はいずれも刑法六五条一項、六〇条、所得税法二三八条一項に各該当するところ、判示第三、第四、第六、第一七及び第三〇中の各所為はいずれも一個の行為で二個あるいは三個の罪名に触れる場合であるから、それぞれ刑法五四条一項前段、一〇条により一罪として重い、又は最も重い、判示第三については林康司の、第四については中村利秋の、第六については西村博文の、第一七については澤田昭子の、第三〇については奥村典子の各税金を免れた罪の刑でそれぞれ処断することとし、以上の各罪につき各所定刑中いずれも懲役刑及び罰金刑の各併科刑を選択し、以上はいずれも刑法四五条前段の併合罪であるからそれぞれの懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により判示第一ないし三〇の各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で、被告人鈴木元動丸を懲役三年及び罰金五〇〇〇万円に、被告人長谷部純夫を懲役三年六月及び罰金五〇〇〇万円にそれぞれ処することとし、被告人両名に対し各刑法二一条を適用して未決勾留日数中各一〇〇日をそれぞれの懲役刑に算入することとし、被告人両名において右罰金を完納することができないときは、各刑法一八条により各金一〇万円をそれぞれ一日に換算した期間その被告人を労役場に留置することとし、訴訟費用については刑訴法一八一条一項本文、一八二条により被告人両名に連帯負担させることとする。

(量刑の理由)

本件は同和会の会長である被告人鈴木元動丸と同和会事務局長である被告人長谷部純夫の両名が、同和会の他の幹部や司法書士、税理士らと共謀し、さらに多数の納税義務者やその代理人・従業者とも共謀して、架空の領収書などを用いるなどして書類上のつじつまを合わせて虚偽の申告をし、もって不正の行為により巨額の相続税又は所得税を免れさせたという、組織的な一連の大掛かりなほ脱事犯であり、ほ脱した納税義務者は合計三七名を数え、そのほ脱率が九〇パーセント前後と高率であって、中には申告納税額零というのも含まれており、そのほ脱額は合計一六億四〇〇〇万円を超えるものであって、被告人両名らが同和会に対するカンパ金名下に本件各納税義務者やその代理人・従業者から受け取った額も合計七億三六〇〇万円余にも達しており、被告人両名はそのうちから給料その他の名目でそれぞれ相当額の不正利益を得ており、本件各犯行の罪質、態様はともに極めて悪質であり、動機の点において格別斟酌すべき事情があるとは認められず、ほ脱の額も極めて多額である上、本件が一般の誠実な納税義務者らに対して与えた影響は大であると言うべきであって、被告人両名の同和会における前示地位を考え合わせると、被告人両名の刑事責任は誠に重大であり、とりわけ、被告人長谷部純夫は本件一連の犯行をいわば主導したものであって、被告人鈴木元動丸が同和会の会長として本件一連の犯行の責任者ではあるが、本件各申告書の作成等に直接的に関わらなかったのと対比して、同被告人の刑事責任よりも一層その刑事責任は重いというべきである。

他方、税務当局は、被告人両名が納税義務者やその被相続人らの同和産業に対する巨額の架空債務又はそれの保証債務を計上しあるいはこれを支払ったなどという内容虚偽の申告を繰り返しているのに対し、その不正を容易に知りえた筈であるのにこれを放置して来たとでも言うべき対応をして来たものであって、これについては当裁判所として強い疑問を抱かざるをえないことは先に述べたとおりで、かかる税務当局の態度が本件犯行を事実上助長した側面のあることは否定できず、このことを被告人両名に対する量刑に関する一事情として斟酌すべきものと考える。その他、被告人長谷部純夫には談合罪等による罰金刑の前科の外には前科歴がないこと、被告人鈴木元動丸は傷害罪の懲役刑について刑の執行猶予の期間を同五四年満了して以後前科がないこと、被告人両名とも現在では改悛の情が認められること等、記録に表われ又は弁護人らが指摘する被告人両名に有利な事情を十分斟酌しても、罰金刑については言うまでもなく、懲役刑についてもその執行を猶予するのは、被告人両名につきいずれも相当ではないので、主文のとおりそれぞれ量刑した。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 萩原昌三郎 裁判官氷室眞、同和田真は転補につき、いずれも署名押印することができない。裁判長裁判官 萩原昌三郎)

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